『ヨーロッパの紋章』:くり返し読む本

投稿者: | 2015年2月21日

気持ちが疲れて擦り切れたような気分になってくると、よくこの本を抱えてベッドに入る。
内容はそのものずばり、ヨーロッパの紋章についてひたすら解説してくれるもので、研究者ではない素人が読みこなせる程度もので、かつ内容が正確なものとして類書がそれほどは多くないのではないかと思う。
9784309222943ヨーロッパの紋章 :森 護|河出書房新社

……おっと、今あらためて調べてみたら版元では品切・重版未定でAmazonではずいぶん高値で古書が出ているんだね。

日本にも家紋という独特の紋章があるが、ヨーロッパの紋章ルールは(日本人の感覚からすると)必死に論理的整合性と汎用性を目指してルールづくりが進んだあげく、ルールに合わせるために時としていささか不思議なこと(無理な「実装」)までもが入り込むこともあるような、興味深いものだ。

色の組み合わせや盾(エスカッシャン)のフィールドの分割の仕方のルールに始まり延々と続き、手に取る度におもしろく読み進めるが、複雑すぎて実は次にまた読む時には半ば以上忘れているので、結果として毎回興味深く読むことが出来るというお得な本でもある。
紋章で使って良い色とその組み合わせ方には厳密なルールがあるわけだが、カラー印刷や彩色が使えない場合それをどう表現するかというルールも決まっており、そのルールを知っていれば古いコインなどに紋章が描かれている場合「カラーであった場合この部分は何色なのか」が明確にわかる、などという、多分一生のうちにそれが役立つチャンスはまずないような知識をも、叩き込んでくれる。

普通の小説もコミックもなんでも読むが、気がついてみると、歴史的な資料、図版、などに基いて特定の(大抵かなり狭い範囲の)テーマについて分かる限りの事実を延々と述べ続ける本というのがわりと好きなようで、くり返し読むものの中には何点かそういうものがある。
要するに、おたく気質なんだろうと、思う。