石橋毅史『「本屋」は死なない』|新潮社
親しい人が書いた本というのはどうしても雑念が混じるから、実は少し時間が経ってから冷静に読もうと思っていた。
でも、献本を頂いてしまったので覚悟を決めて一気に読んだ。
いずれ長い長い感想を書くかもしれないし、ひょっとすると二度と書かないかもしれない。
読み終わって思ったことを、ただ、書いておく。
文章が丁寧で、上質な手触りがある。最近こういう文章を書ける人は減った。重みがあるのに疲れなくて読みやすい。読み始めてすぐそのことに気付いた。
内容は、もちろん興味深い。人によっては「勉強になる」とか「何かを考えるきっかけになる」ということも大いにあり得るので、業界本だし一応業界内では名の知れた人だし読んでおかなければな程度の及び腰で接する必要はない。
読もうかどうしようかちょっと躊躇っている業界内の人は、迷うことなく読みましょう。
ここから先が、最初に「親しい人が書いた本というのはどうしても雑念が混じる」と危惧したことなので、まあ、未読の人は出来れば無視して欲しい。
石橋さんの誠実さが隅々まで満ちていて、読んでいると時々訪ねた本屋の片隅でちょっと困ったような顔で、でも精一杯なんとかしようとしている姿がありありと目の前に浮かぶような気さえした。本人を知っているので、あまりのリアルさに、時に思わずクスっと笑いたくなることさえあった。
そのくらい石橋さんの一番いいところが、隅々まで満ちていた。
そういう意味では、ちょっとした「名著」なのかもしれない、とも思った。
でも読み終わって「やっぱりそこでとどまったのか」とも思った。
この辺は読んだ人にはなんとなくわかってもらえるかもしれない。
それが読み終わった瞬間の一番正直な感想だったのは事実、私の場合は。
この本は、実はけっこう壮大な企ての途半ばの記録なんだろうな、と思う。
見事なロードムービーの第一部だね。
そう、思った。