妹の死

投稿者: | 2018年7月12日

七夕の翌日の朝早く、癌を患っていた妹が亡くなった。
5月の末に父が亡くなった時すでに体調は悪かったので、もうある程度は覚悟はしていた。それでもさすがにそれからひと月ちょっとで亡くなってしまうとまでは、思っていなかった。

葬儀の間ずっと、お経を聞きながら、妹はどこに行ったのかな、と思っていた。

いやもちろん、妹はもういない。前夜納棺をご主人などと一緒にしたので、まさに亡くなったのはよく分かっているのだが、なぜか繰り返し、妹はどこに行ったのかな、としか考えられなかった。
遺体があるそこにはいないと思う。
しかし魂のようなものがどこかにあるとも思えない。
地にも、空にも、どこにもいない。

いつものシャキシャキした口調で私の優柔不断ぶりを笑いながら諌めたりはもうしない。
もしかすると相手に本当の何かが伝わっていないのではないかなどと全く気にすることなく、なめらかに会話を交わすことができた唯一の人間だったが、あの気持ちの良いやりとりをすることも二度とない。
それは分かってはいるが、繰り返し、どこに行ったのかなということしか頭に浮かばなかった。

ああなるほど、完全に無宗教だとこういうことになるんだな、という思いが途中でちらりとよぎった。
経が語っていることが、単なる音ではなく、意味として耳に入ってきた瞬間があったから。
しかし今更魂が天国に迎えられるとか、なにかそういうことを自分に投げ与える気にもならない。だから、それは仕方がない。

誰にとっても家族は多かれ少なかれそうだろうけれど、妹は私にとって何かしら特別だった。
唯一無二だった。
そして、妹はほんとうにいなくなった。

うん。

さようなら、妹。
さようなら、さようなら、さようなら、妹。