営業に取りかかる前に

投稿者: | 2011年3月9日

店舗を訪れたら、担当の方と実際に話を始める前に次のようなことに注目し、その店舗の性格をおおざっぱにつかんでみましょう。

 

1.どのようなお客さんが店内に多いか?

たとえば店内にスーツやワイシャツ姿のお客さんがほとんどいないのであれば、おそらくその店の中心客層は地元の、住宅街から来ている人々であり、近くにあまり企業などがない、というようなことがすぐに推察できます。
もちろんこの時に、どの辺の年齢層が多いかということにも注目しておくべきですが、時間帯によって客層の中心が大きく変わることも多いので、自分が見回した瞬間の印象で決めつけないように注意した方がよいでしょう。

2.店内の棚構成の比率はどんなふうか?

たとえば店舗全体の面積に対してコミックスの棚が大きければ(あなたが訪れた時は下校時間ではなく、実際にその姿を見かけることがなくても)おそらく中・高生がたくさん立ち寄る店だろう、ということが推測できます。
あるいはまた、児童書の棚が大きければ(少子化のご時世であるにもかかわらず)その店舗のある地域は小さなかなり子供が多い、そしてもちろんその年齢の母親も多い、ということが推察できます。

情報を活用して営業を始める

上記のような観察から、たとえ直接はっきりとした結論を導き出せるほどの判断が付かなくても、営業を始めた時に、さりげなく会話の中に「xx な方が多いようですね」「xx の棚を大きくとっていらっしゃいますね」という話題を織り込めば、多分書店員の側から「ええ、当店は xxx なお客さんが多いですから」とか「近くに xxx があるものですから」というような答えをもらうことが出来るでしょう。
おおざっぱにでもその店舗の特性を把握できれば、力を入れて薦めるべき本が自ずと分かるはずです。
書店員から良い反応をもらえる確率もぐっと高くなります。
書店員の側も「いや、それはうちでは売れない」という反応を繰り返していると、気分全体が否定的になってしまいます。次々と紹介する中で、たとえたまたまその店に合う物を薦めてもその頃には肯定的に取り組む気持ちが無くなってしまってさえいるかもしれません。

 

アドバイス:未承諾広告にならないために

わざわざ人間が、人間の元を訪れるのであれば、信頼感を築くことが重要です
ただ「適切な仕入れ数をご判断下さい」ということだけで良いのなら、時間と経費をかけて人間が出向く必要はありません。詳しい内容を記した DM を送っておくだけでよいのです。
信頼感の基礎は、「あなたのご事情を理解しようとつとめています」という努力の姿勢を示すことで作られます。
重要なポイントはあなたのご事情、という部分です。
どの店舗にも平均的な書店のイメージからは必ずズレている部分があります。
それが立地から来る特徴であったり、あるいはそこに勤務する社員さんの意識的な努力の結果による他店との差別化であったり、事情は色々でしょうが、理由は何であれ、その店が他とは違う部分にこそ着目しましょう。
あなたが何かのセールスをされた時「若い女性は」とか「ご主人様は」など、ひとくくりにされてしまったら、相手の話を熱心に聞きたいでしょうか?
あなたの事情、あなたの好み、あなたの個性などを出来るだけ尊重してくれる事をこそ望みませんか?その上で初めて相手の提案を検討しようという気持ちになれるのではないでしょうか?
携帯メールなどに無差別に送られてくるいわゆる「未承諾広告」にひどくイライラさせられるのは、それが無差別だからこそです。99%はあなたの好みにも個性にも合致しませんし、そもそも最初からそれらを考慮するつもりも、全くありません。
書店にセールスする時も「今これが売れています」や「当社の一押しの新刊です」等ではさっぱり効果がないのは、それがまさに、書店に対する未承諾広告でしかないからです。
全国の主要書店のほとんどでベストセラー第一位になっていようがいまいが、それは「よその店の話」であって「あなたのお店の話」では無いのです

※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。