あらためて言うまでもないことのようですが、笑顔は大事です。
女性の方は比較的自然に笑顔になれる方が多いようですが、男性は下手な方が思いのほか多いです。そのために、大変損をしている方もおられます。
明らかに仕事が出来る優秀な方だということは分かるけれど、真面目さのあまりなのか、帰ってゆかれるまでの間にほとんど笑顔を見せない方がいます。人間と いうのは不思議なもので、その方の仕事ぶりが100%信頼に足るものだと頭では分かっても、何らかの感情的なつながりを持てないと「信頼してしまおう」と 踏み切れないものです。
笑顔は大切なメッセージ
笑顔は「あなたに敵意を持っていない」「あなたのことが気に入っている」ことを示すボディーランゲージです。
人間は誰かとコミュニケーションを試みている時、無意識に相手のボディーランゲージをとても重要な情報としてチェックしています。親しい相手であるのに、 電話での会話がぎこちなくなりがちなのは、相手のボディーランゲージが読めないためであることは良く知られていることです。
話の合間に意識して笑顔をはさむようにしてください。
熱心に、少し長めにトークをしたな、と思った時。相手が興味深い発言をしたな、と思った時。そんな時には、意識して大きな笑顔を見せてください。
句読点のように、自分の行動に、笑顔をはさんでみてください。
笑顔は、あなたの優秀さに信頼感を加えます。
その効果は、多くの方が思っているよりも、絶大です。
あなたの方から、笑顔を見せることが大事なのだ、ということにも気付いてください。
人間は側にいる他人に明らかに影響されます。側にいる人に無意識に同調しようとするのは、ほとんど本能に近い行動です。
職場で誰かひとりがイライラし始めると、やがて非常に多くの人がイライラし始めます。この負のサイクルに影響されない人、負のサイクルを意識的に断ち切っ て穏やかで肯定的なサイクルへ持ち込める力のある人が職場にいないと、職場全体が毎日とても不幸な場所になってしまうくらい、同調の本能は強いものです。
営業の現場でも同じです。あなたが相手に警戒心を抱いていたり、不信感を抱いていたりして、それが態度や表情に出ていれば、自動的に相手もあなたに同じ気持ちを抱きがちになります。
あなたがまず相手を信頼している、相手を好いている、というボディーランゲージを勢いよく見せてください。
笑顔を循環させる
個人的な問題を抱えているために笑顔が出にくくなることがあります。仕事のことや家庭のことで、問題が心にわだかまっていると笑顔が出にくくなったり、笑顔がとても「固く」なったりするのは、残念ながら誰にでもあることです。
あなたに笑顔がなかったり、笑顔が固かったりする時、その原因が相手に対して警戒や不信を感じているからではなく、あなたの個人的な悩みにあるかもしれないと気づいてくれる人は、非常に少ないです。
世の中には生まれつき感受性が鋭かったり、他人にも幸せでいて欲しいという愛情をたっぷり持っているためにしだいにそういうことに敏感になっていったりする人も確かにいます。いますが、まれです。
あなたの、「気づいて欲しい」という願いに釣り合うほどには、決して気づいてもらえない、というのが実際のところでしょう。
個人的な問題をきっぱり忘れて仕事に励め、などという月並みでいい加減なことを言うつもりはありません。そんなに簡単に忘れられるなら言われなくたって自分でなんとか出来ますからね。
根本的な解決策でもないし、ちょっとひねくれた見方に思えるかもしれませんが、まず最初のステップとして笑顔は人のためにあると考えてみてください。
幼い子供が浮かべるような心からの笑顔はもちろん作為無く現れるものですが、その笑顔を目にした時の自分の反応の方を思い返してみましょう。それがどれほど、無条件に、絶大な影響力があるかを驚きとともに思い返してみましょう。
思い出せたら、それをあなたが人に与える、という風に考えてみてください。自分が今笑顔の気分ではないから笑顔を作らない、のではなく、笑顔を他人のために。
さて、次のステップです。
人間に限らず多くのほ乳類の子供の「愛らしい」姿や仕草は、実は周囲の愛情や保護意識を本能的に呼び起こす、生物としての戦略的なものであるらしい、ということを知っている方もあるでしょう。
他人を優しい、幸せな気持ちにさせることは、結果として同じものを自分へ返してもらうことに非常に役立っている(野生動物にとっては役立つどころか、死活問題でもある)わけです。ここで起こっているのは良いものが次の良いものを呼び起こすという過程が続い ていく循環です。
あなたが笑顔を相手のために向けることは、結局あなた自身へ戻ってきます。
アドバイス:笑顔の作り方
ほとんどの方は意識していませんが、顔の筋肉も鍛えることが出来ます。
良く鍛えられた顔は素敵な表情を力強く作れるようになります。
笑顔が苦手な方はそもそも笑顔を作る回数が少ないために、笑顔を作る筋肉そのものが衰えてしまい、自分としては思い切りの笑顔をしているつもりでも、相手にはごく曖昧な表情しか伝わらないというハメに陥っている場合もあります。
- 素早く(のろのろとはダメです)
- 唇を左右に大きく、力を込めて、引き
- 上の前歯を見せ
- 眉毛を、少し、持ち上げる
・・・鏡の前でやってみると分かりますが、これは一種狂気じみた笑顔になります。
形だけは確かに笑顔にかなり近いのですが、心が入っていないので、そのギャップが怖いのです。このままでは、とても使えません。
しかし、筋肉の訓練にはなります。
どうも笑顔が苦手だなぁという方は、とりあえず上記の筋肉の訓練をしてみましょう。
本当か?本当にそれでいいのか?と不審に思う方もおられるでしょうから、ちょっと追記しておきます。
上記した笑顔の作り方や笑顔の筋肉の鍛え方の話は、演劇やモデルクラブで実際に教えられていることです。私がここで捏造したものではありません(笑)
のど(声帯)を締め上げるようにして笑う癖のある人は、笑い声が自分のおなかに響いているかどうかを意識するようにしてみてください。のどが自然に広がり、朗らかな笑い声が出やすくなります。
そこまでして笑顔を「作る」ことに反発を感ずる方もあるでしょう。私もプライベートでは「訓練されていないけれども、はにかんだ、その人の性格をのぞかせるような笑顔」が実はとても好きだったりします。
しかし、私自身よく知り合わない間は「怖い人だと思っていた」と言われることが何度もありました。すると、ああそうか、多分全く笑顔を見せていなかったのだろうなと思い当たり、反省します。
友人知人に、時間をかけて自分を知ってもらうという場合と、仕事などで無用な敷居を素早く取り除いて本来の業務に入れるようにする場合とでは、やはり笑顔 の意味が違います。そのような配慮は、自分が損をするかしないかというだけではなく、相手に対する思いやりでもあります。
最後にひとつだけ。
気をつけましょう、曖昧な笑顔はむしろ拒否のサインです。
中途半端な笑顔を連発するより、ぐっと真剣な表情のままバリバリと仕事進め、時折とびきり大きな笑顔を見せる方が何倍も効果的です。
※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
「この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。