FAXについて(3)

投稿者: | 2011年3月22日

広告との連動

新聞や雑誌などに広告を出した場合、そのことを書店に知らせるべきでしょうか?
結論を先に言えば、知らせた方がよいでしょう。
本来は書店が自主的にチェックを実行するのが当然ですが、厳しい経費削減や時間不足などのために主要新聞に掲載された広告を網羅出来ていないところもあります。
また、出版物の内容によっては特定ターゲットの読者をねらって雑誌に広告を載せる場合もあるでしょう。雑誌に掲載された場合は(なにしろ膨大な数の雑誌がありますから)たまたま店員の誰かがその雑誌を個人的に見ていたという場合以外はなかなか気付くこと が出来ません。
そのようなことを考え合わせると、広告のアナウンスは版元さんの側からした方が、より確実でしょう。

広告に対する版元さんと書店の認識のズレ

あまり表立って話題にされたことがないようなので、ここで広告に対する版元さんと書店の意識のズレに付いて述べておきます。

書店は一般的に、広告を派手にうったからといって絶対に売れるという保証はない、と思っています。つまり、広告の効果については懐疑的とまでは言いませんが、「効果がある場合もある」という程度の認識です。
しかし版元さん側から見ると、広告は多くの場合には明らかに効果があるはずです。広告を出したことによる過去の実績がなければ、あえて高い料金を払って出し続けないでしょう。
「広告を出します」と言った時の書店員の妙に煮え切らない態度に、内心いらだち感じた経験がある方もいることでしょう。

この意識の差は、次のようなところに原因があります。
書店側から見ると、店の立地や客層によって、反応が出る場合とそうではない場合があります。特に地域密着型の中小書店や大型でも地方都市の書店ではその傾 向が強いでしょう。これはある意味、当たり前です。ですから、個々の店単位での実感としては「広告に必ず効果があるわけではない」という認識になります。
版元さん側からみると、通常は全国の書店、全国の不特定多数の読者を相手にしていますから、ある程度の反応は必ずある(書店からの注文や読者からの問い合 わせがある)という経験をしている場合の方が多くなります。ですから、広告にはそれなりの効果がある、という認識になります。

この二つの立場からの認識は、もちろん、どちらも間違っているわけではありません。ただ、どのような認識の差があり、その原因はどこにあるのかということを理解しておく方がお互いのためでしょう。

広告のあとでのFAX

さて、そういうわけですから「広告を出します」という予告FAXに対する書店の反応があまり良くなくても、それだけで落胆する必要はありません。
広告が出たあと、それに反応して読者が書店に問い合わせや注文をした場合には、書店はその広告にはっきりと効果があったと認識します。
たとえ広告予告の時にその書店が仕入れをしておらず、結果としてまだ「販売」はしていなくても、感覚的にはそれはすでに「実績」に近いもの、になっています。

ですから、広告を出した直後にもう一度「広告を出しました」というFAXを送るとかなり受注率が高くなる可能性があります。書店は今回のあの広告には効果 があり、そして世間が反応しているというはっきりとした認識を持っているわけですから、今度は発注しようとするでしょう。
次の重版日あるいは次の搬入日がいつであるというような情報を添えて明確な決断を迫ると、さらに良いでしょう。
業務の忙しさや経費の問題で二回FAXすることは出来ないということであれば、私個人は広告を出した直後の方を選ぶようにお勧めします。

ただしこの件に関しては具体的な版元さんの実績などをデータとして教えたいただいたことがあるわけではありませんので、無責任に断言するのは控え、そういう考え方もあるのでは?という発言にとどめます。

広告との連動でのその他の留意点

重版のタイミングを合わせる

最近は広告と重版のタイミングが完全にずれてしまっているようなケースはめったに見かけなくなりましたが、これはとりあえず必須です。
書店の店頭で一番困るのは、お客様が広告を見たその日に客注においでになり、そして版元さんにその日に電話をすると品切れている、というケースです。書評などの場合には仕方がありませんが、広告だった場合はお客様は書店や版元さんに対して強い不満と不信感を持ちます。
お客様の中には、事前に版元さんに直接電話で在庫の確認をした上で書店に客注を入れるために来店され、「今出版社に在庫があるから」と念を押される方もあります。
過去に上述したような広告がらみの経験や、書店か版元のミス、あるいはちょっとした行き違いのために実際には在庫があったものを無いと告げられた経験、などをして、自分自身で確かめたこと以外業界全体を信用しなくなってしまわれたのです。とても残念なことです。

 

出来れば、減数をしない

広告で効果が見込めると思われるので注文をしてくださいと呼びかけていながら入荷してみると大幅に減数されていると、かなりムッとします。
中には確かに非常識な数を注文してくる書店もあるでしょうが、原則として「版元側から呼びかけた場合には」減数をしないで下さい。
書店側の勝手な感情論にすぎない面もあることは承知の上ですが、「版元側から呼びかけた場合には」というニュアンスが分かっていただけるでしょうか?
減数せざるを得なくなる可能性が高い場合には、あらかじめそのことを明記するか、あるいは「一セットxx冊、限定xxセットまで」というような受注の仕方をしても良いでしょう。

 

場合によっては買い切りも視野に入れる

どのようなやり方をとるにせよ、書店側としては
・ いつ入荷するか
・ どのくらい入荷するか
このどちらか、あるいは両方が分からないというのはとても困るものです。
買い切り条件を承諾するなら優先的に満数出荷というやり方だって、もっと利用してかまわないと思います。
そもそも原則としては注文品は買い切りであり、その原則に対してフリー入帳という例外が存在しているというのが筋ですからね。

 

電子メールの利用

電子メールやWEBサイトの利用法については、後に専用の項目でより詳しく述べます(「電子メールについて」の回がそれにあたります)。
ここではFAXを電子メールに置き換えることに関してだけ、事前にほんの少し触れておきます。
電子メールを利用できる状態になっている書店は次第に増えてきています。「利用できる状態になっている」ということと、活用できるだけのスキルを持った人 材が社内にいるということは別ですから、今現在の段階でFAXを電子メールにどんどん置き換えて行くべしとは言えません。
ただし、電子メールに置き換えた場合、次のような効果が望めるということは検討してください。

 

画像を利用できる

誤解しないで欲しいのですが、これはメールに直接画像を埋め込め、ということではありません。これは避けるべきです。最低限「相手が画像入りの電子メール を受け取ることにあらかじめ同意している」のではない場合には勝手にやってはいけない、ということだけははっきりと意識してください。
ここでお勧めする「画像を利用できる」という意味は、あらかじめ「表紙画像」や「よりくわしい説明」などを載せた専用のWEBページを用意しておき、電子メールにそのページのURLを載せることで、FAXでは掲載することが困難なきれいな画像や、目次の一覧・冒頭 の一部など文字数が多い詳細な情報を見てもらうことが出来る、ということです。

 

効果を推定できる

さらに、上述のように専用のページを用意してそのページのアクセス解析が出来るように準備しておけば、最低でも「何回そのページが閲覧されたか」ということを把握することが出来ます。
少なくとも、何通の電子メールを送信しそれに対して何回用意したページが閲覧されたか、というおおざっぱな「効果」は知ることが出来ます。
FAXの場合は、送信したあと読まれずにただ捨てられてしまっても全く分かりません。上述の方法なら、極端な例ですが、1000通のメールを出して一度も 用意したページが閲覧されなかったら、1000通のメールは全て黙って捨てられたか、読まれたけれどもURLをクリックしてより詳しく知ろうとまでは思っ てもらえなかった、ということがはっきり分かります。
逆に1000回閲覧されているのに結局注文は一冊も来なかったら、それは非常に多くの人の興味は引いたが、発注にいたるための何かが欠けていたらしい、ということが分かります。
その原因は、商品そのものの魅力不足、メール文面の作り方の失敗などなどいろいろとあるでしょうが、少なくとも「何か問題があった」ということは明確に分かります。FAXの場合にはここまで明確に把握することは出来ません。
このような基本的なネット利用は、数年以内には、真剣に考慮すべきことになっていきます。

※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。