チェシャ猫の笑み

投稿者: | 2018年2月21日

おそらく日本人の100人中99.5人くらいは同意してくれないと思うけれど、ニカッと笑った時の宮崎あおいってチェシャ猫に似てるよね。

……うん、だれもそうは思わないだろうなとは思っていますけどね。
なんだか私はニカっと系の表情をしている時の彼女を見かけるといつも、勝手に、そう思ったりする。

チェシャ猫(Cheshire Cat)の笑みはsmileではない。
grin:歯を見せて、一番弱くても「にっこりと微笑む」、もっと強いと歯をむき出しにしてニカッと笑う、というような感じになるので、つまりは有名なテニエルのアリスの挿絵のチェシャ猫の笑みになる。

キャロルがなぜこれを思いついたのか諸説あるけれど、個人的には彼は大好きだった言葉遊びでたまたま
grin like a Cheshire cat
という慣用句から
a grin without a cat
を思いついて面白がっただけだろう、と思っている。
『シルヴィーとブルーノ』などを読むと、現実になにかキャラクターを作るというよりはある種シュールレアリズム的な言葉の果てしないこねくり回しに夢中になっている様が伝わってくる。
とても印象的なキャラクターであるにもかかわらずチェシャ猫は作品中では大したことをしていないし、出番も少ないしね。

とはいえ、何度思い出しても、笑みだけを残して消えていく猫という意味不明で強烈な印象は弱まることもない。
芸術が意味など越えていることの、ささやかながら強烈な例。
小説を読んではその登場人物達の「思い」だの「苦労」だのあげくには「著者がこめた思い」だのを考えたりするのは、ほんとに要らないことだよ。

この猫は変わりすぎているので果てしなく分析したり隠された意味とかいうものを発掘してきたりできるかもしれない。

でも結局チェシャ猫は、すうっと、笑みだけ残して消えていく。