『重力が衰えるとき』ジョージ・アレック・エフィンジャー:私的な古本屋さん

投稿者: | 2010年12月25日
重力が衰えるとき (ハヤカワ文庫SF)
ジョージ・アレック エフィンジャー,浅倉 久志 早川書房
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参照:ジョージ・アレック・エフィンジャー(Wikipedia)

カバー裏の解説文

おれの名はマリード。アラブの犯罪都市ブーダイーンの一匹狼。小づかい稼ぎに探偵仕事も引きうける。今日もロシア人の男か ら、行方不明の息子を捜せという依頼。それなのに、依頼人が目の前で撃ち殺されちまった! おまけになじみの性転換娼婦の失踪をきっかけに、血まなぐさい風が吹いてきた。街の秩序を脅かす犯人をつかまえなければ、おれも死人の仲間入りか。顔役に 命じられて調査に乗りだしたものの、脳みそを改造した敵は、あっさりしっぽを出しちゃくれない。…実力派作家が近未来イスラーム世界を舞台に描く電脳ハー ドボイルドSF。

SFとしてどのくらいの出来なのか、ということにツッコミを入れたい人もあるだろうけれど、とにかく面白いんだからこれでいい。主人公も友人知人も 救いがたいほど普通の人間で、その範囲内でよろよろと頑張っているあたりのキャラクター造形が素敵。なんというかな…「小市民ぶり」かな。時にその小市民 ぶりが人間として地に足の着いた正常なバランス感覚を辛くも保つ力にもなっていて、いくら読み進めても荒唐無稽という虚しさを感じないあたりが好印象。
そしてもちろん舞台に設定されているアラブの犯罪都市ブーダイーンそのものの面白さもある。

『重力が衰えるとき』が気に入ったら二作目『太陽の炎』三作目『電脳砂漠』もぜひ。

著者のエフィンジャーが結局50代で亡くなってしまったのは、残念としか言いようがない。繰り返す病気と闘いながらこれほど苦くて楽しい作品を書き続けたその情熱と気力を思うと頭が下がる。
実に残念だ。