電子メールについて(2)

投稿者: | 2011年3月24日

サイトとの連携

電子メールについて(1)を受けて、(2)以降は具体的な提案とその意義を説明していきます。
今回は電子メールと自社のWebサイトを連携させて効果を得る、ということについてです。

 

メールにURLを入れる

表紙など

FAXについて述べた回の最後の方にも書きましたが、告知FAXを電子メールに置き換えた場合の一番分かりやすいメリットは、参照先のURLをメールに入れておくことでFAXでは配信しにくいカラー画像やデータ量の多いファイルを利用してもらえるようになることです。
多色で大きなサイズの表紙画像を確認してもらって訴求力を高めることが簡単に出来ます。必要であれば裏表紙や帯も、見返しでも、見せることが出来ます。
直接訪問して現物見本を見せるか、見本を送付しなければ出来なかったことが比較的少ない手間で可能になるわけです。料金の高いカラー印刷のパンフレットをさらに郵送するということの代替にもなれる可能性があります。
これは特に、なかなか足繁くは訪問できない地方の書店さんに対しては有効な補助手段になるでしょう。
いや、うちでは前から自社サイトで画像は載せているよ、という方も沢山あるでしょうが、URLを指定してメールを送ることで、確実にそれらを参照してもらえるようになるメリットは大きいです。

注文一覧など

サイト上で注文一覧もどんどん配ってしまいましょう。
書店は昼間は接客や納品で忙しいですから、夜遅くになったり、中には閉店後に自主残業するというような時になって、やっと「そういえばあそこの棚を入れ替えたい」と思いついたりします。
ところが、当然ですが、大部分の版元さんはそのころには業務が終わっています。半分冗談でその頃電話をしたら自店の担当営業さんがちゃんと電話に出てきてくれてかえってびっくりした、というような経験をしたこともないではありませんが(笑)
さてまた、上述のような時というのは書店員の多くは今この場で一覧注文書が欲しい!と思っています。なぜなら、その仕事に集中できるのは今だからです。
このような期待に応えるためには、サイト上に注文一覧を置いておき、注文一覧専用のURLをメールに常時掲載しておくことです。

Q.FAXですぐにお送りするようにしているからそれでいいのでは?
A.時としてFAXは字がつぶれてしまいます。特に小さな文字で一覧が作られているとFAXを通すと大変つらいことになったりします。

Q.直接受注できるフォームなどさらに進んだ仕組みをサイト上に用意しているので不要なのでは?
A.一覧を全て、ある程度の時間をかけて見た上で組み合わせやバランスを検討したい場合が良くあります。その場合には、特定のものが検索できるということを優先した仕組みはしっくりきません。 いささかローテクでも一覧票そのものが入手できるということのメリットは今も失われていません。

Q.具体的に注文一覧はどのようなデータ形式で用意すると良いだろうか?
A.HTMLでの表(テーブル)ではコピー&ペーストしても利用しにくいので、あまり意味がありません。 PDFをダウンロードさせるようにするのがベストでしょう。たとえ文字が小さくてもPDFならほとんどつぶれません。ただし、単にPDFファイルへリンク を貼るだけではほとんどのブラウザはそれをプラグインによってブラウザの画面に表示しようとします。インターネット利用に不慣れな方はそれをどうしたらい いか分からない可能性があります。 「右クリックして保存してください」などの説明書きを添えるかあるいは圧縮ファイルに収めて、何も考えずにクリックしても自動的にダウンロードになるようにするのも良いでしょう。 ただしそこまでやるなら、さらにその圧縮ファイル自体、ダブルクリックだけで中身が取り出せる自己解凍書庫にしておかないと新たな問題を抱え込んでしまうかもしれません。

Q.PDFファイルを作れる用意がないが、高い金を払ってAcrobatを購入しなければならないだろうか?
A.GIF画像にしてしまうという手もあります。 モノクロのGIF画像にすればさほどサイズも大きくなりませんから、注文一覧をスキャンしてGIF画像にしたものをダウンロードしてもらうようにするのは悪い手ではありません。

POPなど

POPを配って歩くこと自体手間がかかりますし、かつて述べたようにそれを使ってもらえるかどうかの保証もありません。地方などに送付するには経費もかかります。
サイト上にPOPデータを置いておき、そのURLを示しておくことで書店さんに自主的に利用してもらえる可能性があります。
ポイントは「自主的に」です。
自主的にそれを取りに行くということはその書店さんはあきらかにPOPをつけようという意志を持っています。従ってそのPOPはおそらく非常に高い確率で有効活用されるでしょう。
もちろん「ぜひ使ってください」とか「ここに立ててもよろしいですか」と熱心に自分の足で歩いた結果、そもそもはその書店さんはPOPをつけようという考え自体がなかったのにPOPをつけてもらえるようになったという能動的な営業を置き換えることは出来ません。
しかし、実際に足を運べない書店に対しては、POPデータを公開しておかなければ、可能性は全くのゼロです。全国でたった1軒でもそれを自主的に利用してくれるところがあれば、ゼロではありません。
さらに(あえて言ってしまえば)自社でPOPを作り上げる分の経費も書店さんが負担してくれます。これは別に書店さんにその経費を押しつけるという意味ではありません。
「自主的に」POPを作ろうとする書店さんは、そもそも昔からそのような経費は厭うことはなかったのです。

Q.POPデータを用意するのが大変そうで嫌だ
A.そもそも自社でPOPを作る時には必ずその途中の段階で画像があるわけですから、それをただ流用すればよいのです。 ただしフォトショップやイラストレーターなど凝ったソフトを利用している場合には、かならずJPGなどの汎用的な形式での書き出しをしておくこと。また、 パワーポイントなどを利用している場合も同じです。全部の書店さんが高価な画像ソフトやオフィスソフトを手元に揃えているわけではありません。

効果を知る

メールそのものに画像を埋め込まない、一覧表やPOPデータのURLを掲載する、など「メールそのものとは別にサイトにアクセスさせる」ことには、別の重要なメリットがあります。これは意識して、あえて行うべきことです。
以下は以前に書いたこととかなり重複してしまう部分がありますが、もう一度説明しておきます。
上述のようにサイト上にページを用意してそのページのアクセス解析が出来るように準備しておけば、最低でも「何回そのページが閲覧されたか」ということを把握することが出来ます。
少なくとも何通の電子メールを送信し、それに対して何回用意したページが閲覧されたか、というおおざっぱな「効果」を知ることが出来るわけです。
FAXの場合は、送信したあと読まれずにただ捨てられてしまっても全く分かりません。上述の方法なら、極端な例ですが、1000通のメールを出して一度も 用意したページが閲覧されなかったら、1000通のメールは全て黙って捨てられたか、読まれたけれどもURLをクリックしてより詳しく知ろうとまでは思っ てもらえなかった、ということがはっきり分かります。
逆に1000回閲覧されているのに結局注文は一冊も来なかったら、それは非常に多くの人の興味は引いたが、発注にいたるための何かが欠けていたらしい、ということが分かります。
その原因は、商品そのものの魅力不足、メール文面の作り方の失敗などなどいろいろとあるでしょうが、少なくとも「何か問題があった」ということは明確に分かります。FAXの場合にはここまで明確に把握することは出来ません。
すでに発売されたもののPOPデータなどにどのくらいアクセスがあるかで、その商品が書店さんでどのくらい積極販売されているかの感触をつかむことも出来るかもしれません。
初めのうちは本当にただの「感触」に過ぎないかもしれませんが、複数の本に渡ってデータをとり続けていけば「あの本の時の何割方しかアクセスがない」とか「あの本と同等の勢いでアクセスされている」といったような比較も出来るようになります。
サーバのアクセスログを直に利用できるなら、たとえば独自ドメインを持っている書店さんであれば、どの書店さんが見にお出でになったかを特定することさえ出来ます。
熱心に繰り返し利用してくれている特定のドメインの書店さんがあり、それが一度も営業に出向けていない地方の書店さんだということが分かったりしたら、頃合いを見計らって電話を入れてみるというのも良いかもしれません。
ただし「盛んにサイトにアクセスされていますね」などとその話を直接持ち出すのは、すでによほど親しい場合は除いて、やめておいた方が無難です。サーバの ログというのは自動的に必ず記録されるものではありますが、そういう事情を知らない方もたくさんおられますから、なんだかストーカーまがいに思われてしま います(笑)

Q.「アクセス解析」ってどうやるの?
A.御社が利用しているWEBサーバに最初からそのためのツールが備 わっている場合もあります。 また、アクセスログそのものが直接利用者に公開されている(FTPソフトなどでダウンロードしてこれるようになっている)場合もあります。業者に確認してみましょう。 そのようなツールやサービスが提供されていなくても、簡単なデータ取得で良ければ無料のサービスがインターネット上でいろいろと提供されています。 ここで詳しい説明を始めるとあまりに長くなりますので割愛します。ご必要なら直接メールなどでご相談下さい。

サイトとの連動に関して補足

Webサイトを能動的に利用してもらうものと位置づける

これまで述べてきたようにWebサイトを「受動的に見てもらうもの」とだけ考えるのではなく、メールと連動させて能動的に利用してもらうものと位置づけることは、とても重要です。
極論すれば、表紙画像、POPデータなどを示すための専用のページを作る時間も技術もなくても、それらをFTPソフトでサーバにアップロードすることさえ出来れば、データそのものの直のURLをメールに記せばよいのです。最悪データ用のページである×××.html ではなく×××.jpgや×××.lzhでも良い、ということです。
表示するページがないという空のウインドウが開いていきなりダウンロード用のダイアログが開くだけだったり、いきなり画像がポツンとなんの説明もなく表示されるだけだったりという、いささかネットの利用のさせ方としては推奨しかねる状態だったりはします。
しかし、それでも利用してもらうこと自体は可能です。

一般読者と書店を分けて考える

一般読者向けに、ある意味広告の延長としてひろく情報を「見てもらう」ためのページづくりをすること自体は間違いではありません。書店向けに使える性格を付け加えると、サイトを公開し、維持している社内価値はさらに上がります。
というより、一般読者向けにページづくりをすることと書店向けに作ることは別物だと考えた方がよいでしょう。たとえ同じドメイン上にその二つがあったとしても、内容や方針は分けて考えることをお勧めします。
出版者側からの様々な告知を電子メールに置き換えることによって得られるメリットは、多くの場合サイトと連動させることによって得られるのであり、電子メールは(単に形が変化した告知文なのではなく)そのための「ツール」なのだ、というとらえ方をしてくだ さい、というのが今回のお話の主旨です。

会員登録は急がなくてもよい

そろそろイライラしてきた方もあるでしょう。
「会員登録については?メールやサイトを利用すると言えば、なんと言っても会員登録してもらってデータ収集でしょう?」と。

会員登録無しで実現できることを考え、実践する

確かに会員登録を実行してもらえれば、さらに明確に書店を特定した(登録条件によってはさらに詳細なデータも添えて)情報を得られます。
しかし、会員登録をする側の立場で考えてみましょう。
「会員登録したら、すごくいいことがあるの?」
これにつきます。
会員登録のメリットが新刊案内メールの定期配信と、たまに抽選でオリジナル携帯ストラップがもらえる、というような程度のことだった場合、果たして大喜びで登録する必然性があるでしょうか?
ノベルティ好きの方にとっては携帯ストラップも悪くはないかもしれませんが、少なくともそれは、業務そのものに直接メリットがあるわけではありません。
前段までに述べてきたことを、別のややえげつない表現で言い換えればWeb上に無料のエサをまけということです。

この考え方はWebが商用サイトとして使われ始めた初期の頃からすでにfree staff(無料商品)をサイト上に配することで訪れる人を増やし、かつ、サイト内の特定の方向へ誘導する技術とされてきた、ある種の常識です。

ただしここで提案したようなエサ(詳細データ・注文一覧・POP用データ等々)は本当に利用者の役に立つものですし、また利用してもらうことによって自動的に提供側にもある程度のメリットが見込めるものです。
まずこの関係をきちんと考え、会員登録など強要しなくても出来ることであればどんどん実践してしまいましょう。
そのあとで、さらにもっと必要であると考えるなら、会員登録制のことを考慮しても良いでしょう。

なぜ必要?どうやって運営?

「さらにもっと必要である」というのは、「なぜ」「どんな情報が」必要であるか社内ではっきりとした目標が定まっていることが前提です。
A+B+Cの情報を×××のように組み合わせて分析し、それが×××に役に立つのでその情報が欲しい、というような目標なしにただ無闇に情報をもとめても意味がありません。
また最近は個人情報流出事件の頻発などで、一般の方も詳細な情報を他人に渡すことには神経質になってきていますから、昔のように「プライバシー・ポリシー」の明示も無しにあれもこれもと入力を求めるような会員登録のさせ方は改めなければいけません。
会員を抱えるということは、会員ならではのメリットを感じ続けさせる必要があるということでもあります。データの収集が出来たらあとは用が済んだので放置、というのは感心しません。
会員を喜ばせ続けるための企画立案や新たなサービスの開始など、そのための手間暇は実際大変なものです。そのようなことを視野に入れずにいきなり会員登録制を急ぐと、最悪の場合には、メリットよりもデメリットが上回ることにさえなりかねません。
会員登録を急ぐ前に、提供する側にも提供される側にも大きな負担がかからずに出来る小さなことを、きちんとやっていくことから始めましょう。

※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。