アポを取りませんか?

投稿者: | 2011年4月9日

かなり多くの営業さんがアポ無しでお出でになります。
以前から不思議でならなかったのですが、これはなぜなんでしょう?
膨大な「無駄足」が発生していると思うのですが…。

書店の多くがまだ完全週休二日制ではないし、アルバイトやパートさんの複雑な出勤体制の隙間を埋めるように互いの出社日決めることも良くあるので、担当者が特定の曜日が定休日であるというケースはむしろ少ないかもしれません。
訪問する書店を沿線別でスケジュールを組んでいたりするというような事情もあるとは思いますが、アポ無しではどうしてもすれ違いが多くなります。運が悪いと何ヶ月もすれ違ったままになってしまうこともあります。
これが嫌で、現役の書店員だった時代に自分のスケジュールをインターネット上で公開し、それをご覧になって訪問を決めていただこうというのが、昔々このサイトを始めたきっかけだったくらいです。

版元の営業さんの側としては、たとえ書店の担当者が不在でも、完全に無駄足ではないとは言えます。書店を廻ることで現場の状況を知ることが出来ますから、何かしら得ることはあるわけです。
しかし、書店の担当者の側としてはお会いできなければ結局得られるものはほとんどありません。注文書などを残していっていただいても、「お勧めです!」というようなメモを添えていただいても、直接お話しを伺わないと判断が付かないという場合も非常に多いです。
出来れば、やはりご訪問いただく時には直接お会いしたいものです。

担当者の権限は大きい

直接の担当者が不在の時、同僚の方や上司の方に受注の承認をもらうという場合もあるでしょう。
誰が見てもある一定数以上売れることが確実と分かる著者やテーマの場合はそれでもあまり問題はないかもしれませんが、残念ながらそういうケースはそう多くはありません。微妙な判断を要する仕入れはやはり直接の担当者が決断すべきものです。

書店の中で担当者の権限は事実上大きいです。
店長などの最高責任者が版元の営業さんに「いいですよ、入れましょう」と承認を出した場合、それは自動的に部下である現場担当者への指示・命令になると考えるのが当たり前のようではあります。
しかし、実際にはいざ品物が入荷してきてから店内でちょっとした騒ぎになるというのは良くあることです。「聞いてないよ」というわけです。

この「聞いてないよ」は感情的な対立やコミュニケーションの失敗という、社内問題の面もあります。
しかし現実問題として、各担当者は自分が管轄する売り場を、空間的にも、(何月になったらアレを…というような意味で)時間的にもどのように使おうかと、全体としてとらえて計画しているものですから、そこへいきなり外部からポーンと何かを放り込まれても困ってしまいます。
店内で言い合いになるならまだしも、頑固な担当者の場合には自分自身が承認したのではない入荷品は無言のままこっそり返品してしまうこともあります。無条件に全てたたき返す、という人も、実際にいます。

書店が分野別の担当制をとっていることがほとんどなのは、本という商品が非常に種類が多く、それらを適切に組み合わせて売り上げを作って行くには深く、継 続的な知識が必要だからです。ある程度以上の坪数の書店では日々リアルタイムで動いていく現場への判断は、肩書きがなんであれ、直接の担当者が責任を負う のが当たり前です。そのような責任を負っているからこそ、場合によっては上司が承認した仕入れを反故にすることもあるのです。
いささかわがままで、行きすぎの場合もあるでしょうが、このような担当者の責任とそれに伴う権限は、基本的には尊重すべきものです。

アポを取りませんか?

最悪、直前になって「あと1時間くらいで伺いたいんですが」という電話でもけっこうです。
以前からお話ししているように、書店の店頭は予測不可能なタイミングで忙しくなってしまうことも多いですが、同時にかなり融通も利きます。アポを入れてくれるなら仕事を調整してゆっくり話せるという場合もあるかもしれません。
書店の担当者にとっても営業さんにとっても、何も損はないと思いますが?

※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
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