キホンの「ホ」

投稿者: | 2011年4月10日

最近の「営業のヒント」はやや細部に入り込み、場合によってはやたらと高度な話題に進む傾向があります。そこで、営業というものの非常に基本的なことに関するお話しを加えてみることにします。

入室したらどう挨拶をするとか、名刺はどう渡すとかいったような、基本の「キ」とも言うべきことにはいわゆる入門書が沢山あります。ですから、ここではそういうお話しはやめましょう。
また、すでに一線で頑張っておられる方々を励ましたり、より深いヒントを与えたりするものも、やはりたくさんありますから、これもやめましょう。
曖昧だけれども基本の「ホ」のあたりのお話しです。

あなたの人格が否定されたわけではない

営業経験のない方がおそらく一番精神的プレッシャーを感ずるのは、営業をして拒否されたことをどう受け止めるのか、ということだろうと思います。

多くは断られる

私自身も、見込み客に電話をしてアポイントメントを取り(いわゆるテレアポをして)、それからようやくその人に会いに行って話をする、というきわめて典型的な営業をしていた頃は、本当に憂鬱でした。
そもそもテレアポというものはきわめて成功率が低いものです。電話をかけてもかけても断られ、そのまま昼休みの時間になってしまったりすると、本当に食事がマズかったものでした。
アポイントメントが取れた方はある程度は進んで話を聞こうという気持ちを持ってくれていますから、とりあえずこちらのプレゼンテーションを最後まで聞いてはくれます。
しかし、もちろん、話を聞いてくれた方々の多くが、お断りになります。
そうなるとまた、遅くなった夕食のマズいことといったら…(苦笑

拒否されるのはあなた自身ではない

日常生活で(特におそらく日本では)はっきりとした拒否を受け取るということは、あまりありません。はっきり拒否をされると、なんだか自分の全人格丸ごと否定されたような気分になります。
これが、じわじわとあなたの気分を蝕みます。
しかし、多くの場合、拒否されたのはビジネス上の提案であって、あなた自身ではありません
あなたがその相手とプライベートで知り合っていれば、ひょっとすると友人にさえなったかもしれない、ということだって大いにあり得ます。

そんな調子の良い話があるわけはない、と思いますか?
そもそも多くの人は何かをはっきり拒否するということが(特に相手の人間が目の前にいる場合には)苦手なのです。出来ることなら誰かにはっきりと拒否とを突きつけるような行動は避けたいと思っています。
それはあなたの部署の同僚同士のことや「ご近所さん」のことを思い浮かべれば、本当だということが分かります。
相手だって出来れば拒否はしたくないけれども、断らざるを得なかったのだ、と捉えることです。

下手な営業は優しくない

意地悪だから断るという人は多くない

世の中には確かに根っから意地悪な人やひねくれた人もいます。
けれども全体から見ればその数は少ないです。その数が少ないからこそ「あの人は意地悪だ」と言われるのであって、人間の大部分がそうなら誰もそんなことは言わないのです。

断る根拠を無理矢理作り出す心理

断らざるを得ない時は相手も残念な気持ちになっています。出来るだけ気持ちよく断らせてあげたいものです。
うまく断れないと、相手も強いプレッシャーを感じて必要以上に乱暴に(あなたとのつながりをなんとかして断ち切ろうとして)断ります。
そのようにさせるのは、半分はあなたです。
日常生活でも、何かあなたとしては乗りたくない話をしつこく持ちかけてくる人のことが、次第に嫌いになるという経験をするでしょう。
始めはその提案そのものを断りたいだけです。
しかししつこく言われ続けるとだんだん、相手の人間性や外見まで「イヤなやつだ」と思うようになってきたりします。
初めは「ちょっとうるさい」とか「けむたい」という程度だったのに、自分はあの人が嫌いだ。あの人の存在そのものが自分とは相容れないのだ。などと、次第にエスカレートしていきます。
そうやって、提案を強く拒否する根拠を自分の中に作ろうとしているのです。

下手な営業は人に優しくない

営業の場でも、同じです。
たとえば、あなたが一方的に話し続け、相手の意見や気分の変化を受け入れなかったら、相手は「追いつめられて」行きますから、そこから脱するために乱暴に断ります。
営業は相手を身動きならない片隅に追いつめるためにするものではありません。

そのようなつもりがないのにそうなってしまうなら、それはビジネス上の技術として、あなたの営業が「下手」なのです。
つまり下手な営業は人に優しくありません

営業として上達しようと思う時、このことをちょっと思い出してください。あなたが上達すれば、あなたも相手も嫌な気持ちにならずに済むのだということを。
そして、おいしくご飯を食べてください。

まだ続きます。

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この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
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