キホンのホ(4)

投稿者: | 2011年4月13日

ジェット機でも必要としている人はいる

「自分はいつも誠意を持って営業をしているのに断られてばかりいる。誠意なんて結局役に立たないんじゃないの?」
そんなあなたは、必要としている人に必要なものを提供する、というごく当たり前のことを忘れているのかもしれません。

自家用ジェット機でも必要としている人はいます。
私たちの大部分にとっては必要が無いどころか、漠然と欲しいと思ったことさえないでしょう。
それでも誰かは必ず欲しいと思っています。欲しいどころか必要だと思っています、たとえば私たちの多くが「エアコンが必要だ」と思うような具合に。

さて、ここで誤解をしないようにしてください。
「だからどんなものだって売り込めるんだ」などと言っているのではありません。
そのような言い方をする人や、そのような無責任な「前向き志向」を主張する本があるのは事実です。けれども、それは嘘です。好意的に言っても、あきらかに説明不足です。

ねじ一本でもいらない人にとってはいらない

ねじ一本でも、必要ではない人にとっては全く必要がありません。たとえ20本で150円というようなお買い得価格であっても、同じです。
つまり、ジェット機であっても「必要としている人」には売れるけれど、ねじ一本でも「必要としていない人」には決して売れない、というのが本当のことです。

あなたが、自分が扱っている商品をどんなに熟知し、それを誇りに思っていても、そのこと自体は実はセールスの成功・不成功に直接は関係ありません。
相手がそれを必要とするのかどうか。
相手はなぜそれを必要とするのか。
そのような判断をしないままに行う営業は無駄ばかりです。

人はモノは買わない

「これこれの性能・装備を備えた自家用ジェットがあります。しかもお値段はこの程度です。素晴らしいでしょう?」
確かに素晴らしい。
でも、それをアルバイトに走り回っている大学生が住んでいそうなアパートを訪問して話はしません。これは全く当たり前だと誰にでも分かります。
分かりますが、その理由は分かりますか?
どうせその大学生はその金額を払えないから、ですか?
違います。

「これこれの性能・装備を備えたワゴン車があります。しかもお値段はこの程度です。素晴らしいでしょう?」
今度は、場合によっては大学生だってローンを組んで買う可能性はあります。
しかし、車が欲しい最大の理由は、恋人と二人きりでドライブに行きたいということかもしれません。ワゴン車よりツーシーターのオープンカーで無駄に気取ってみたいかもしれません(笑)
あなたが扱っている手持ちにオープンカーかそれに準ずるものがあれば直ちに話を切り替えるべきです。ワゴン車しか手持ちのカードが無くても、ワゴン車でどのくらい無駄に気取れるかということを話してみるべきです。
これも当たり前だと思うでしょう?
ところが、これが出来ない方が非常に多いです。いかに「モノとしての商品」が素晴らしいかをひたすら力説し続けるばかりという方が、とても多いのです。

人はモノは買いません
商品が相手にとって素晴らしいかどうかは、最終的にはそれを相手に使ってもらった時の満足度で決まります。
そしてその満足度は「~をしたい」「~になりたい」などの欲求に対して、それをどのくらい十分に、どのくらい「お買い得」に満たしてくれるかで判断されます。

99.9%の大学生は自家用ジェットを買わなければと思うべき理由がありません。
一方車なら、恋人とのドライブのために買いたい理由があります。

激務が続く大企業の最高責任者は(たとえ民間の航空機を利用する方がずっと安くても)自分が望む瞬間に望む場所にいることがとてつもなく重要だと思えば、あきらかに自家用ジェットを買いたい理由があります。
一方、必要な理由が自分の中に見あたらなければ、150円のねじは買いません。

あとほんの一回か二回です

さて、短期集中連載の「キホンのホ」もすでに終盤にさしかかっています。
え?本当にこれだけのことでいいの?
たったこれだけのことでうまく行くようになるはず無いでしょ?

いいえ、大丈夫です。基本の「ホ」はとてもシンプルです。
でも確かにここまでのことだけでは、まだダメでしょう。よい営業さんだとは言ってもらえても「営業成績」は伸びない可能性があります。
次回はそのことについてお話ししましょう。

※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。