でもダメだよ、という時
前回の最後で、よい営業さんだとは言ってもらえても「営業成績」は伸びない可能性が、まだある、と言いました。
ちょっと思わせぶり過ぎで「えー?やな感じ」と思った方もいるかもしれません。はい、ごめんなさい。
でも本当にそういうことはあります。
これまで4回に渡ってお話ししてきたようなキホンのホを一所懸命実践しているのに、なんだかダメだよ、と。
いろいろと理由はあると思います。でもおそらく、それは「テクニックが未熟」とか「笑顔が悪い」とか、そういう細かなことではありません。
うまく相手に話を聞いてもらえる態勢になった。ちゃんと説明もした。相手の要望を出来るだけつかむようにしてそれに合わせて提案もした。
で?
「注文下さい」ってはっきり頼んだ?
帰っちゃっていませんか?
こんなに説明もし、相手も「うんうんなるほど」と納得してくれたみたいだから、それ以上は言うまでもない、と思いますか?
言わなくてもうまく行く場合も確かにあります。でも、多くの場合は、はっきり言った方がいいのです。
これは世間で言うところの押しの話とはちょっと違います。
「これこれのものをこのくらいの数いかがですか」とか「これに関してはこのようなローンの組み方が出来ます」といったような、具体的な購入手順を示すことも、まだ説明する側の責任なのです。
見込み客:「いいねぇ」
あなた:「いいでしょう」
そのあと、じゃあどのように実際に購入するかという決断や手順を、見込み客の側に丸ごと押しつけていませんか?
相手がその辺の話を自分からしてくれるのを、ただニコニコしながら待っていませんか?
そんなおかしな話があるものかと思う方もあるでしょう。
でも本当にあるのです。私自身たくさん経験しました。
失敗している営業さんで最も多い二つのタイプ。
その1が、前回お話しをした、相手が必要とする理由を考えずにひたすら商品そのものの優秀さだけを説明しまくるというタイプ。
その2が、「で?具体的にどうするの?」とこちらから言ってあげないと、下手をするとそのまま丁寧に挨拶をして帰ってしまうというタイプ。
本当なんですよ。
あなたは帰っちゃっていませんか?
ちゃんと頼みましょう
説明の過程で
- 商品知識が不足している
- 商品に自信を持っていない
- 相手のためになろうと本気で思っていない
- 相手の必要を真剣に聞き取ろうとしていない
というような失敗を犯していれば、自ずと自信を持って「では注文を下さい」とは言えません。
逆に、それらをきちんとやってきたのであれば、自信を持ってはっきりと言うべきです。
最後の一押しと称して、これを「ハンコをつかせるためにちょっと強引に説得する」ようなことだと思いこんでいる人が多いようです。
この誤解が、そんな強引なことはとても自分には出来ないと思わせ、ますます「では注文下さい」と言わなくさせる。
それは違います。
言ってあげることが、相手にとっても「最後の肩の荷」をおろすことになります。
相手のストレスを出来るだけ自分で引き受ける
決断をするというのは、とてもストレスがかかることです。
これまでの発言や交渉条件にミスや見落としはないか。何か確認し忘れている情報があるのではないか。自分は、結局のところ、本当にこれが欲しいのか。…そういう不安や疑惑が最後の瞬間にどっと押し寄せてきます。
「大丈夫だ」「間違いない」と全速力でチェックし直し、「よし決めよう」という気力をあらためて奮い起こさなければなりません。
この強いストレスの瞬間を、丸ごと相手に押しつけてはいけません。
「さあ、言うだけのことは言った。やるだけのことは全てやった」
という瞬間は、確かに一仕事終わったような気持ちになります。まさにあなた自身が「肩の荷を降ろした」ような気持ちになります。
そういう瞬間にスーッと呼吸が楽になっている自分に気付いたりするでしょう?
でももう少しだけ頑張りましょう。
相手が肩の荷を降ろすまで、あなたは降ろしてはダメです。
本編はこれでおしまい
さて、「キホンのホ」の本編はこれでもうおしまいです。
とてもシンプルです。
シンプルすぎて拍子抜けだ、営業というのはもっと複雑怪奇で難しいものじゃないの?という方もあるでしょう。
確かに営業の現場は複雑怪奇です。
でも、このシンプルな基本の上に全てがあります。これまで述べてきたことをきちんとやらないで「高度なテクニック」に頼っても、それは付け焼き刃で、いつかは行き詰まります。
あともう一回だけあとがきとして、「キホンのホ」を書いた背景を、書くでしょう。
※ご注意:一部の記事は書かれた時期が古いために現状と合わない場合があります
「この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
そのため一部の内容は業界の常識や提供されているサービス・施設等、また日本の世間一般の現状と合わない可能性があることにご注意下さい。