キホンのホ(2)

投稿者: | 2011年4月11日

オリンピックは分かりやすい

営業という仕事は、なんだか他の仕事とはちょっと違った特殊なもののように思えることがあります。
本屋へ行くと『一年で×億売り上げるスーパーセールスマン』とか『××世界一の営業術』とか、なんだかオリンピック級の人々が華麗な技を競い合っている世界であるかのようだったりもします。
いやいや…とても自分にはやれないよ、と落ち込んだりします。

たしかにオリンピック級の力を持つ営業マンは実在します。ええ、そりゃもうびっくりです。
しかし、それは他の仕事でも全く同じです。数人のスーパースターと、大勢のそうではない人々がいます。営業という仕事の場合、成約した/しないとか、その金額がいくらであるかとかいった面で、誰にでも分かりやすいというだけです。

まさにスポーツと同じですね。
誰かと誰かが一緒に走れば必ずどちらかが先にゴールにたどり着き、そのことは生まれてから一度もスポーツをしたことがない人にも大変よく分かります。
だからこそオリンピックは成り立つわけです。

あなたもしばしば営業している

あなたも友人に「あそこの店の××はとってもおいしかったよ!」と教えて、今度一緒に行こうと誘うことがあるでしょう。
「あの映画は素晴らしかった。とにかく見ておくべきだよ」
「あの本を読んでいないなんて、なんてもったいない!」
「あの化粧水を使うようになってから肌が全然違うよ」
すべて、とても基本的な意味で、まさに営業です。
何かに愛情を感じ、それを他人にも利用したり購入したりするように勧めるという行為は、全て営業です。
その時あなたは、単に自分が好きだというだけではなく、それをぜひ相手も利用したり購入したりするよう説得しているからです。

説得に成功して一緒にその「××」を食べに行ってみたら、残念ながら友人はその味があんまり好きじゃなかったということはあり得ます。勧めた化粧水が体質的に合わなかったということもあるかもしれません。
しかし、あなたに悪意があったわけではありません。相手にも喜んでもらいたいという気持ちがあっただけです。そして、出来るなら、その喜びを共有したいとも思ったでしょう。

信頼関係が初めの一歩

友達とはすでに信頼が成立しています。
仕事として誰かに会う場合には、大抵はまだ信頼が成立していません。ですから、まずそこから取りかからなければなりません。
営業職が多くの場合身だしなみをうるさく言われるのもそのためです。相手にまず、自分が怪しげだったり、平均からひどく外れたりしておらず「話せば分かる」人間だと思ってもらわなければなりません。
善意の固まりかもしれなくてもシュウシュウいっているスーパーサイヤ人といきなり親しく話し込むのはなかなか難しいでしょう。

外見や雰囲気の面はとりあえず相手のお眼鏡にかなったとしましょう。次は?
そう、相手と信頼関係を築いていかなくてはなりません。
信頼関係といっても、あなたが100%素晴らしい人間で、欠点はひとかけらもなく、しかもあなたと相手の好みは完全に一致している、などと思ってもらう必要はありません。

友達にもいくつも欠点があるでしょうし、あなたとは好みが合わない部分もあるでしょう。あなたはそれを考慮した上で友達の話を聞いているはずです。
この友達が「ちょっと甘い」と言うならそれは「猛烈に甘い」ということだ、なぜならこの友達は自分からすると信じられないくらい甘党だから、というような具合に。
それでも、この友達との信頼関係そのものにひびが入るわけではありません。

次回は、信頼の基本は何かということをお話ししましょう。

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この文書の趣旨」でもご紹介しているように当コーナーが本にまとまったのが2008年(実際に原稿をまとめたのは2007年暮)なので、多くの記事はそれ以前に書かれています。
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