昔は保安検査のゲートで必ずひっかかっていたものだった

投稿者: | 2018年4月8日

20代30代の頃は飛行機に乗ろうとすると、保安検査場のゲートで必ずひっかかっていたものだった。
もちろん、何も持っていない。ナイフもはさみも爆弾も、管狐も。
どう考えてもなにひとつ反応するものがなくなって、三回目にゲートをくぐってもやっぱりダメ、というようなことがしばしばあった。
反応しているのは左脚と決まっていて、最後には係員の念入りなボディーチェックとなるわけだが、当然ながら何も無い。
あまりにいつもひっかかり、いつも同じ所なので、幼い頃に左脚になにかを埋め込まれているけれど本人は知らされていないとか、自分でも知らないが実は私は高度なアンドロイドだとか、そういうことがあるんじゃないかと思ったくらいだった。

でも、いつからか全く反応しなくなった。
いちいちひっかかっていた頃は煩わしいと思っていたけれど、このちょっとしたイベントがなくなるとそれはそれでなんだか物足りない。
なにかがいつも誤判定されていたはずで、センサーの性能が改善されてやがて誤判定がなくなったのか、あるいは、誤判定をひき起こしていた私の体にあった何かが、ある時期からなくなったのか、というあたりになるのだと思う。
それはそれでいいのだけれど、では誤判定の対象になっていたその正体はなんなのか、今も謎のままだ。

今回父や母のことでどうしてもまとめて時間をとって札幌へ行かざるを得なかった。やらなければならないことがとてもたくさんあり、しかもそのほとんどがやってみた結果でまた次の行動が変わるというやたらと未定部分が多い状態で、頭の中はいろいろいっぱいになっていた。
それでも保安検査場で習慣的に「ゲートでひっかかるかな? ひっかかるとほんとに何もないのに係員に手間をかけさせるよなぁ…」などとちょっと身構えている自分がいて、おかしかった。

札幌はまだ寒かった。
桜がまだ来ていないのはもちろんのこと、風が強いと思わず声が出るほど、寒かった。